早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
彼の無頓着さに呆れていると、廊下から声と足音がしてきたので、慌てて封筒を自分のバッグにしまう。この件については、帰ってから議論するとしよう。

まもなくして、ふたりの女性社員が入ってきた。ドアを開けて先に現れたのが、アシスタントの先輩、二十四歳の泉(いずみ)さんだ。

職場内で一番仲のいい彼女が、私に気づいてにっこりと笑顔を見せた。ふんわりとしたショートヘアが、ボーイッシュな性格でありながら可愛い顔立ちの彼女によく似合っている。


「おはよ、キョウちゃん。早いねー」

「おはようございます。今日は早起きしました」


爽やかに答えたけれど、早起きの理由が社長の健康診断の結果をこっそりいただくためとは言うまい。

私、野々宮 杏華(ののみや きょうか)のことを、泉さんを含め仲のいい社員は〝キョウちゃん〟とフレンドリーに呼んでくれる。

専門学校に入ったと同時にバイトを始め、まだ三ヶ月ほどしか経っていない私。先月誕生日を迎えて十九歳になったが、人間的にもまだまだひよっ子だ。

それでも居心地よく働けているのは、皆の人柄がいいからに他ならない。
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