早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
「キョウは昔っから欲がないよな。もっとワガママ言っていいんだぞ」


……結構なワガママだと思うよ。だって裏を返せば、私のそばからあなたを離したくないってことだもの。

〝好きな人ができたら潔く離婚しよう〟だなんて、今はまったく本意ではなくなっている。

後ろめたさから身を縮こませながらも、甘えていたい欲に負け、彼の肩にコテンと頭を乗せた。



──どのくらい経っただろうか、身体を持ち上げられる感覚と共に意識も浮上した。

あれ、私寝ちゃってたのか……。ていうか、また尚くんがベッドに運んでくれてる?

彼の逞しい腕と息遣いを直に感じて、瞼は開かないままだが、自分がお姫様抱っこされていることをぼんやりと理解した。私がソファで寝てしまったときは、毎回こうして運んでくれるのだ。

今日も本当にごめん、と思う反面、下ろされたくなくて寝続けてしまう。悪い子だ。とはいえ、眠いのも本当なのだけど。

されるがままでいると、尚くんの呆れたようなため息混じりの独り言が聞こえてくる。
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