早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
ところが。彼は写真を撮りたいからと、女性スタッフにふたりきりにしてほしいと頼んだものの、一向に撮ろうとしない。私の前に近づき、物思いに耽るようにただこちらを見つめているだけ。

どうしたんだろう、とキョトンとしていると、なにかを考えている様子の尚くんがふいに口を開く。


「あれ、なんて言うんだっけ。〝病めるときも~〟ってやつ」


どうやら、誓いの言葉を思い出そうとしていたらしい。私もちゃんとは知らないが、ドラマや漫画で見聞きしたのをなんとなく覚えている。


「〝あなたは病めるときも、健やかなるときも……とにかくどんなときも、これを愛し、敬うことを誓いますか?〟みたいな?」

「はい、誓います」


私の適当なセリフに対し、尚くんは背筋を伸ばし、真面目な顔になってそう宣言したので、思わず吹き出してしまった。

まさかそう来るとは。挙式の練習をしているみたいで笑える。これも私に結婚式気分を味わわせるためのお芝居なんだろうか。

彼はまだそれをやめず、今度は神父さんになりきるのだ。
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