早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
初めてのデザインの仕事を任せられ、急に緊張しだしてしまう。でも、何事も経験だ。やらなきゃなにも得られない。

背筋を伸ばし、「わかりました!」と元気に答えると、鬼頭さんは無表情のまま頷いた。


 *

翌日、鬼頭さんと冴木さんはトップページのデザインをいくつか考えてきて、まとめたものを物置と化したデスクに座る尚くんのもとへ提案しに行った。

黒縁眼鏡をかけた尚くんは、どのレイアウトもしっかり目を通し、クライアントの大まかすぎる要望も把握したうえでアドバイスをしてくれる。

その的確さに感銘を受けたらしい冴木さんは、ワークスペースに戻りながら尊敬の声を漏らす。


「どうすればさらによくなるのか、自分ではわからなかったところを社長がピンポイントで指摘してくれました。少し変えるだけで、ゲームの世界観を出しつつ、レストランのホムペだっていうこともしっかりわかるようにできそうです」

「そうですね。これで一度クライアントに確認しましょう」


鬼頭さんの表情も、若干明るくなっているように見えた。きっと、尚くんの意見に納得したのだろう。
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