早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
「そんなことわかってる」


ピクリと反応して振り向けば、彼は私の波立った心を穏やかにするような笑みを湛えて、こちらに優しい眼差しを向けていた。


「焦る必要なんかねーよ。キョウが一人前の人間になろうとして頑張ってることも、皆についていこうと必死に働いてることも、俺は全部わかってるから」


私の努力を汲み取ってくれる言葉が、じんわりと胸に染み込んでいく。

……そう、だよね。ずっと一緒にいた尚くんが、私のことを理解していないはずがないもんね。

過保護にしてくるのも、単に子供扱いしているわけではないみたいだ。もしも、ちゃんと〝女〟として見てくれているのだとしたら……。

未熟な夫婦の関係から、一歩先に進める？

淡い期待が、胸の中で色づく。彼から目を逸らせずにいると、椅子がギッと軋むと共に、骨張った手がこちらに伸びてきた。

私を映した瞳が柔らかく細められ、長い指は産毛を撫でるみたいにそっと頬に触れる。


「今だって十分、お前は俺の自慢の奥さんだよ」


甘めの声が、早鐘を打つ私の心を真綿のように包み込んだ。

尚くんはいつだって、どんな私だって認めてくれる。そんなあなたが、好きで好きで仕方ない。

きっと、この想いも受け止めてくれるんじゃないだろうか。
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