早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
そういえば、婚姻届は私側を先に記入したあとに尚くんが提出してくれたから、彼のほうの証人が誰なのか聞いていなかったっけ。

まだ母の死から間もなかった当時は、あれよあれよと進んでいく結婚話に正直ついていけていなくて、尚くんに任せっきりだったのだ。

婚姻届も、彼に言われるがままサインしたような状態だった。人生の一大イベントなのだから、私ももっとちゃんと入籍について調べておけばよかったと、今になって思う。

とはいえ、加々美さんには打ち明けていることくらいは言っておいてほしい。きっと面倒くさかったか、忘れていたかのどちらかだろうけど。

旦那様に呆れた視線を向けるが、彼はまったく気にした様子もなく飄々としている。


「あいつの言う通り、そろそろ飯食って帰ろう」

「そうだね。お腹空いた」

「あ、そういえばさっき、なにか言おうとしなかったか?」


思い出したように聞かれ、やっと平常心に戻った心がギクリと強張った。

気持ち的にも雰囲気的にも、今はもう告白などできそうにない……。

勢いってすごいなと実感しつつ、「ううん。なんでもない」と笑って返す。そそくさとバッグを肩にかけると、不思議そうにしている尚くんのそばに寄り添った。

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