早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
もしそうだとしたら、すごく嫌だ。

私では満たしてあげることができないのだから、仕方ないのかもしれない。けれど、好きな人が自分以外の誰かに欲求をぶつけている可能性を考えると、いてもたってもいられない。

急激に焦燥と危機感が募った直後、自分にもできることを思いつき、「尚くん!」と呼びかけた。キョトンとする彼に、真剣な面持ちで言う。


「私、尚くんの妻なんだし、できることはするよ」

「できること?」

「……キス、でよければ」


穏やかな二重の瞳が、息を呑むようにわずかに見開かれた。

キスするだけでも、少しくらいは欲求不満を解消できるんじゃないか。そう思って勢いで言ったものの、彼を満たすほどのテクニックなど持ち合わせているはずもなく、すぐに自信がなくなってくる。

「ダメかな、それだけじゃ」と弱気な声をこぼして、肩をすくめた。

そのとき、ソファに座ったままの尚くんが、前屈みになって近づいてくる。

大きな手で濡れたままの頭が引き寄せられ、彼の胸におでこがコツンとぶつかった。
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