CANDY
CANDY
俺は煙草をふかしながら、横に置いてある資料の上の、小さな飴を見つめている。

思い切り煙を吸い、そして吐く。久しぶりに煙でドーナツでも作ってみようか、と思ったが止めた。そんなことは、今の俺の可能性を広げることにはならなかった。
 
俺は迷っていた。大学を卒業したは良いものの、自分を選んでくれる会社は見つからず、バイトで日々を食いつなぐフリーターとなって一年、所謂就職浪人だった俺を拾ってくれた会社は、飲食店だった。膨大な資料と少しの説明を受け、俺たち新入社員は教育店舗と名のついた、地方のチェーン店へ研修のため通っている。

同期は俺を除いて三人。しかし、その三人とも俺を置いて違う店舗へと旅立ってしまった。

俺より少しだけ料理を作るのが早く、俺より少しだけ包丁使いが上手く、俺より少しだけ柔軟な応用力、それだけを持つ三人は、いまや各店舗の正社員という地位を手に入れている。
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