CANDY
皿の割れる音、店長の鋭い目線。

やっちまった……。
 
俺は眩暈を感じる。
 
昨日はあれから、二時間寝られなかった。睡眠時間約三時間の寝ぼけた頭で蕎麦を茹で、器に盛り付けようとした瞬間、左手に持った椀がすべって床に落ちた。
 
すいませーん、今日何個目ですか?
 
口角を上げ、ニヤニヤとした笑みを浮かべたパートの女が言った。

俺はそれに曖昧な笑みを返し、陶器の破片を片付ける。
 
ああ、頭が痛え。
 
店長が目の前に立って、俺を見下ろしている。

バトンタッチか。

俺は素直に洗い場に移動し、客の食べ残しを水に流す。ついでに、俺の失敗も流れてしまわないものなのか。スポンジを握り、汚れを落とした皿を水にぶち込んだら、飛沫が目に飛んだ。
 
ふと、飴が食べたいと思った。
 
一粒が少し大き目の、いつもの飴。
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