CANDY
昼の休憩に入っても収まらないその衝動に負け、俺はレジ横に並べられている飴の一つに手を伸ばした。

一袋十四個入りで百五円。安いな、と思う。

「児島が買うなんて、珍しいな」
 
会計をした店長が笑った。

「気が向いただけです」
 
俺はその笑顔に頭痛を覚え、それでもにこやかに笑ってみせた。

もしかして、俺に合っているのは接客ではないだろうか。そう思えるほどの笑顔で。
 
休憩中は、空いている客用個室の一室に引きこもる。土日となれば一日シフトのバイト学生が俺の周りに溢れかえり俺を賑わすが、平日の今日、俺は一人だった。
 
ガサガサと音を立て、飴を一粒取り出した。

口に放り込む。じわじわと広がる甘みを待って、俺はそれを噛み潰した。

最初は大きく固い飴に歯が立たなかったが、段々と欠片が口の中にジャリジャリと跳ねるようになった。

歯がおかしな感じだ。

そう思ったが、俺が噛むことを止めないまま、休憩は終わった。
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