CANDY
ガリリ、ガリ、ガリガリガリ。

ガリリ、ガリ、ガリガリガリ。
 
あと、五時間。あと五時間働けば今日は終わる。
 
口の中の違和感を拭い去れないまま、終わっていく。
 
今日が終われば明日がやってくる。俺の意思に関係無く。
 
判っていたつもりでも、それは就職してからより俺の中で意識されるようになった。
 
すぐ終わっていく今日。すぐにやってくる明日。その中で、何も出来ず日常に流されていく俺。煙草の煙のように。
 
昔からそうだった。過保護気味な母親に甘え流され、俺のことを好きだと言った美和子にも流されて。

俺は、自分が人を流しているのだとずっと思っていた。ごく最近になって気付いたのだ。俺は常に受身でいる。

連絡をくれる相手がいるということは、連絡をしてきた相手に流されているということ。それを無視できない俺は、もしかして流されることを望んでいるのだろうか。
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