CANDY
考えれば至極当然のことだが、左頬に強烈なビンタ。

「痛ってぇ!」思わず声が上がった。
 
レジ閉めをしていた店長が、驚いて顔を上げる。

持っていたボールペンが床に転がる。
 
引っ叩かれた頬を押さえ彼女を見ると、彼女は真っ赤な顔で俺を睨みつけていた。

俺は見慣れない彼女のその顔に、何故だか笑いが込み上げてきた。

不謹慎にも程がある。そう思ったが、もう遅い。俺は思い切り声を上げて笑った。

「最低」
 
彼女の低い声が俺に突き刺さる。

最低。

そうだ、最低なんだ。俺は、これ以上落ちようの無い人間なんだ。不意に涙が出そうになり、それを堪えるために更に声を高く張り上げた。
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