CANDY
「どうした」

 
店長がレジから乗り出して、こちらを覗き込む。

「あー、大丈夫です」
 
俺はまだクツクツと込み上げる笑いに顔全体を歪ませ、店長に手を振った。

彼女は何も言わない。

ただ笑い続ける俺を見ていた。

怒りは少し解けたらしい。

きょとん、と呆気に取られたような表情。

俺はとうとう涙を滲ませた目元を指で拭い、彼女に向き直った。

「ねえ、君さあ、バイト何年目だっけ」

「……三年目」

彼女は戸惑いながらも俺の質問に答える。

「どうよ、その間」

「どうって?」

「一度でも良い、辞めたいって思ったことある?」
 
俺は、真顔になって訊いた。
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