CANDY
こんなことを訊いて、何になるのだろう。

そして俺は、どう答えて欲しいのか。

自分の中でまだ出ない答えを、彼女に代わりに答えて欲しいのか。

立場も年齢も性別も違う、この子に。

「そりゃあ、ありますよ。しょっちゅう」
 
彼女は、何を聞いてるの、と言った表情で俺を見る。

「あるの?」
 
俺は間の抜けた表情で、素っ頓狂な声で、彼女に尋ねた。

「失敗したときでしょ。先輩に怒られたときでしょ。理不尽なことでお客さんに怒られたときとか、すごく忙しいときとか」
 
彼女は俺の前で指を折り数え始める。

「あーもう辞めようー! 今辞めよう!」
 
彼女は大きな声で叫んだ。
 
レジ閉めに戻っていた店長が、驚いてまたこちらを向く。
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