CANDY
「ああ」

 
彼女は自分の行動が恥ずかしかったのか僅かに微笑んで、飴を取り出した。
「どうぞ」

ラムネ味の飴を、口に放り込む。

ついている味は、どの種類でも舐めている途中でただの砂糖の味に変わる。所詮百五円の飴だが、口に広がる甘さは心地よい。
 
今日の儀式、終了。
 
このあと彼女は、「じゃあお疲れ様でした」と言って帰っていく。免許も持っていない俺を尻目に、買ったばかりの愛車に乗って。
 
彼女は飴を鞄にしまい、俺を振り返る。

「何か」

「ん」
 
煙草を咥えて俺は応える。

「儀式みたいですよね、私が飴を渡すときって」
 
彼女は無邪気に笑ってそう言った。

じゃ、お疲れ様でした。

俺の返事を待たず、彼女はにこりと笑って帰っていった。
< 20 / 21 >

この作品をシェア

pagetop