1億のキス 【LOVE♡ドロップス企画参加作品】
月の光に枢が照らされ、百合が枢の影を被る。
百合が下を向き、両手でそっと枢の身体を離した。
「……ごめんなさい。」
「……許さないよ?」
言葉の後に、枢が俯いた百合を覗き込むように唇を重ねた。
唇を奪うように、でも短く一度だけ。
物足りないくらいが調度いい。
俺がもっと欲しくなるだろ?
百合の俯いた顔からゆっくりと涙が落ちた。
その涙を拭くように百合が左手を顔に当てた。
―どうして今まで気づかなかった……?
月の光は百合の薬指のつけねを強く輝かせた。