キミの声を聞かせて
始業式が終わり、プリントを何枚か配って今日は終わりとなった。
「それじゃあまた明日」
先生の終わりの言葉を聞き皆が立ち上がる。部活に向かう人、そのまま帰る人、そして先生に話しかける生徒もいた。私は先生が女の子に囲まれている姿を淋しい目で見る。
「遠野さん」
「え?」
風磨くんが私の方を見て話しかける。
「修学旅行のグループ一緒にならない?」
「えっ、あー、友達に聞いてみても良い?」
「うん。もちろん」
「いいよ!一緒のグループになろ!」
元気な声で返事をしたのは佳奈。
風磨くんは安心したように笑い
「良かった。それじゃあよろしくね」
と言って教室から出て行った。
「ちょっと何?風磨くんと仲良かったの?」
「あ、えーと...」
「もしかして告られた?」
「...うん。前にね...」
告白されたのは半年くらい前だが、今の態度を見ると気持ちは変わってないということが分かる。先生とのことを知ってもまだ想ってくれていることに心が痛んだ。
「付き合わないの?」
「告白された時はそこまで話したことなかったから...」
そのあとは話す機会が少しあったが、その時にはもう私の心は先生で占められていた。そのため風磨くんの気持ちに応えることはなかった。
「じゃあこれで仲良くなったら付き合う可能性もあるわけだ」
佳奈は楽しそうに言う。
一方私は風磨くんと話したところを先生に見られていないか不安な気持ちでいっぱいだった。
「分かんないかな...それは...」
「もう結衣の中には心に決めてる人がいるの?」
決めてるとまではいかないかもしれないが、今好きになるのは先生以外考えられなかった。
「...でもダメなんだ...。好きになっちゃいけないんだ...」
そう言うと佳奈は私の頭をコツンと叩いた。
「この世に好きになっちゃいけない人なんていないよ。せっかく出逢えて好きになったんだもん。その気持ちを否定しちゃダメだよ」
私を励ましてくれる佳奈。もし先生のことを好きだと言ったら受け止めてくれるだろうか。背中を押してくれるだろうか。
「...ありがとう」
「頑張りなよ」
「うん」
いつかこの気持ちを話そう。佳奈ならきっと優しく聞いてくれる。そう心で思った。
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