キミの声を聞かせて
「遠野。これ運ぶの手伝って」
「...はい」
先生が指差す先にはファイルの山。体育館横で話した日から先生はなにかと雑用を私に頼むようになった。
「こういうの日直に頼めば良いんじゃないですか?」
「お前なら手伝ってくれると思ったからな」
そう言われ、私は仕方なくファイルを運ぶ。
「断って成績落とされたら嫌ですし」
「俺がそんなことする人だと思うの?」
キョトンとした顔で私を見る先生。まぁこの先生はそんな嫌味なことはしないだろう。
「...なんで私なんですか」
「...なんでだろうね」
「はぁ...」
分かりやすいようでいて掴み所がない。そんな人だった。
そして私たちは資料室へ入っていった。
「このファイル整頓するの手伝って」
机の上には私たちが持ってきたものの他に何十冊ものファイル。
「これ全部ですか?」
「てきとうに入れてたら順番ゴチャゴチャになっちゃって。順番通りに並べて」
最初から整頓して入れてればこんなことにはならなかっただろうに...。
「分かりましたよ...」
頼まれたことは断れない性格が災いしていた。それでもパパッとやれば良いかと思い、私はファイルに手を伸ばす。
私が整頓している間、先生は携帯をいじっていた。
「携帯いじってないで先生がやってくださいよ」
「んー?めんどくさいからヤダ」
「あのねぇ...」
めんどくさいことを生徒にやらせるのはどうなのだろうか...。怒る気持ちもあったが、一度引き受けてしまった以上私がやってしまえば良いかと思い作業し続ける。
そして全てのファイルを入れ終えた。
「終わったー」
「ん、お疲れ〜」
「結局先生は何もしなかったですね」
「まぁまぁ」
笑顔で言えばなんでも許してくれると思っているのだろうか。女子生徒が騒ぐほどの良い顔をしている先生。しかし私はその顔で全てを許そうとは思わない。
「もう雑用はこれ限りにしてくださいね。それじゃあ」
出て行こうとしたその時だった。
「あのさ」
「はい?」
「遠野って今好きな人とかいんの?」
「別に...居ませんけど...」
「そうなんだ」
そう言うと先生は携帯をポケットにしまい私の方に近づく。
「な、なにか?」
思わず後ずさりすると棚に背中がついた。そしてその棚に先生は手をつけて言った。
「俺の女になってみない?」
「...は?」
悪戯な顔でそう言う先生。一瞬何を言われたか理解できなかった。
「え、な、え?」
「テンパってるねぇ〜」
棚から手を離しクスクス笑う。
「じょ、冗談言わないでくださいよ」
「冗談じゃないって言ったら?」
こんな時だけ真面目な顔になるのはズルい...。
「ダメに決まってるでしょ」
「ふーん」
そう言うと私の耳元に口を近づけた。
「俺の女になる気になったらいつでも言って」
「だっ、だからなんないって!」
先生から飛び退くように離れる。私の反応を面白がってる先生。
「はいはい。じゃあまたな」
手を振り資料室から出て行く先生。私は地面に座り込んだ。胸のドキドキが治らない。まさかそんなことを言われるなんて夢にも思わなかった。先生の顔と声が頭から離れない。
「冗談に決まってんじゃん」
そう自分に言い聞かせるようにし、資料室から出ていった。
「...はい」
先生が指差す先にはファイルの山。体育館横で話した日から先生はなにかと雑用を私に頼むようになった。
「こういうの日直に頼めば良いんじゃないですか?」
「お前なら手伝ってくれると思ったからな」
そう言われ、私は仕方なくファイルを運ぶ。
「断って成績落とされたら嫌ですし」
「俺がそんなことする人だと思うの?」
キョトンとした顔で私を見る先生。まぁこの先生はそんな嫌味なことはしないだろう。
「...なんで私なんですか」
「...なんでだろうね」
「はぁ...」
分かりやすいようでいて掴み所がない。そんな人だった。
そして私たちは資料室へ入っていった。
「このファイル整頓するの手伝って」
机の上には私たちが持ってきたものの他に何十冊ものファイル。
「これ全部ですか?」
「てきとうに入れてたら順番ゴチャゴチャになっちゃって。順番通りに並べて」
最初から整頓して入れてればこんなことにはならなかっただろうに...。
「分かりましたよ...」
頼まれたことは断れない性格が災いしていた。それでもパパッとやれば良いかと思い、私はファイルに手を伸ばす。
私が整頓している間、先生は携帯をいじっていた。
「携帯いじってないで先生がやってくださいよ」
「んー?めんどくさいからヤダ」
「あのねぇ...」
めんどくさいことを生徒にやらせるのはどうなのだろうか...。怒る気持ちもあったが、一度引き受けてしまった以上私がやってしまえば良いかと思い作業し続ける。
そして全てのファイルを入れ終えた。
「終わったー」
「ん、お疲れ〜」
「結局先生は何もしなかったですね」
「まぁまぁ」
笑顔で言えばなんでも許してくれると思っているのだろうか。女子生徒が騒ぐほどの良い顔をしている先生。しかし私はその顔で全てを許そうとは思わない。
「もう雑用はこれ限りにしてくださいね。それじゃあ」
出て行こうとしたその時だった。
「あのさ」
「はい?」
「遠野って今好きな人とかいんの?」
「別に...居ませんけど...」
「そうなんだ」
そう言うと先生は携帯をポケットにしまい私の方に近づく。
「な、なにか?」
思わず後ずさりすると棚に背中がついた。そしてその棚に先生は手をつけて言った。
「俺の女になってみない?」
「...は?」
悪戯な顔でそう言う先生。一瞬何を言われたか理解できなかった。
「え、な、え?」
「テンパってるねぇ〜」
棚から手を離しクスクス笑う。
「じょ、冗談言わないでくださいよ」
「冗談じゃないって言ったら?」
こんな時だけ真面目な顔になるのはズルい...。
「ダメに決まってるでしょ」
「ふーん」
そう言うと私の耳元に口を近づけた。
「俺の女になる気になったらいつでも言って」
「だっ、だからなんないって!」
先生から飛び退くように離れる。私の反応を面白がってる先生。
「はいはい。じゃあまたな」
手を振り資料室から出て行く先生。私は地面に座り込んだ。胸のドキドキが治らない。まさかそんなことを言われるなんて夢にも思わなかった。先生の顔と声が頭から離れない。
「冗談に決まってんじゃん」
そう自分に言い聞かせるようにし、資料室から出ていった。