熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
第一章
・アトリエに迷い込んだ雄の蝶
人生において、恋愛など不必要。――それが私の信条だ。
なぜなら恋愛なんてしたところで、感情の波に溺れて時間を浪費するだけだから。
静かに、孤独に、世間の存在すら無視して黙々とやるべきことをまっとうする。
それが、画家として生きる私、小柴詩織(こしばしおり)の最良の人生。
仕事である程度の成果を収めることができたのも、恋愛なんかにわき目をふらず、絵筆を動かし続けてきたからだろう。
展覧会ではじめて賞をもらったのは、高校生のころ。当時の恩師の強い勧めで、〝SHIORI〟の名で画家としての活動を始めてすぐのことだった。
受賞以降、私の絵を認めてくれる人は一気に増え、それがただ素直にうれしくて、描いて描いて描きまくった。
そのおかげだろうか。家庭は裕福ではなかったけれど、学費を免除される特待生として美大に通うことができ、私はますます絵にのめりこんだ。