熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
どうやら女と一緒にいるらしい。それどころか、おそらくその女との情事の最中だ。
前の妻とは離婚するとか、詩織が気に入りだとか言っておきながら、他の女と……。
電話が切れてからも、俺の気分は重く、ため息をつかずにいられなかった。
話せば話すほど、兄という人間が分からなくなる。……優良よりずっと強敵だ。
全身に回ったアルコールが今度は自分の弱気な部分を助長しそうになっているのに気づき、俺は酔いを醒ますためシャワーを浴びに立ち上がった。
*
俺は色々考えた末、兄より先に、まともに会話のできる父と話す方が得策だろうと考えた。
しかし、父は俺が帰国したのと入れ替わるように海外出張に出かけてしまい、会う時間が取れたのは二週間後のこと。
その日俺は実家を訪れ、両親と俺との三人で母の手料理を食べることになった。料理の得意な母は、イタリアンで統一した凝ったメニューを作ってくれた。
しかし、イタリアンを楽しむどころではない俺は、久々の団らんに表情を綻ばせている両親に悪いと思いつつ、食事が始まってすぐに本題に入った。