熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
・再会を待ち焦がれて
翌日出勤した俺は、すぐに例の嘘をついた秘書を副社長室に呼び出した。
その男性秘書は三島遼(みしまりょう)といい、歳は確か二十七。美形ではあるがいつも脱力したような表情をしていて、頼りないのかと思いきやその働きぶりには隙がなく、俺は信頼を寄せていた。
なのに、まさか嘘をつかれるとは……。
裏切られたようなショックを抱えつつ、デスクの前に彼を立たせて俺は尋問を始める。
「……三島、なんで呼び出されたのかわかっているか?」
「はい。私が電話で嘘を申し上げた件ですね」
三島は驚くほど堂々と自分の罪を認めた。怯えたり、ごまかしたりする様子もない。
「わかっているのなら話は早い。嘘をついた理由を説明してもらおうか」
あの電話がなければ、もう少し長く詩織との時間を過ごすことができた。俺はそのことを根に持っているので、少々厳しい口調になってしまう。
「理由は……社長のお兄様のお考えに、賛同したからです」
「兄の考え?」
「ええ。とても兄弟思いのお兄様でいらっしゃる」
兄弟思い……? あの自由奔放な兄の、どこがだ?
いったいどんな話を聞かせられたのか知らないが、三島は兄に心酔しているようだ。