熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「どういうことなのか、もっと詳しく――」
俺がそう言いかけた瞬間、デスクの上の電話が鳴った。大事な話の途中だが俺は一旦頭を切り替え、受話器を取った。
「南雲だ」
『あ、梗一? 俺、桔平』
受話器から聞こえてきたのは、今まさに会話に登場していた兄の声。ちょうどいい。本人の口から、今すべてを聞き出そう。
「兄さんか。俺も話があるんだが、そっちの用件は?」
『俺、今詩織のところにいるんだけど』
「……なっ。どうして……」
予想外の状況に、どくん、と心臓が大きく揺れた。
兄が詩織のところにいる……?
とういことは、今あの島に? 彼女は、大切な聖域に兄を入れたのか?
まさか、兄と再会して、初恋が再燃した……なんてことはないよな。
詩織は俺を待つと言ってくれた。でも、兄の存在も彼女の中では絶対に小さいものではなくて……。
無意識に悪い予感ばかり思い浮かべてしまい、受話器を持つ手に汗がにじむ。
それでも、彼女に関することを聞き漏らすわけにはいかないと、緊張しながら耳を澄ませていたときだった。