熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~

眉をしかめて青年を見つめながら、私は正直な気持ちを伝える。

『私は南雲に会いたくない。彼には昼間失礼なことをされたばかりなの。だから悪いけど、あなたと一緒には行けない』

青年は黙って私の英語を聞いていた。それから少しの間をおいて、理解した、という風にうなずく。

よかった。この青年は南雲のように性格の悪い人ではなさそう。そう思って、胸をなでおろした瞬間だった。

青年はむんずと私の手首をつかみ、私を無理やりに引っ張って歩き出す。

「ちょ、ちょっと!」

慌てて抵抗するけれど、青年は申し訳なさそうに苦笑を浮かべて言うのだった。

〝彼女が逃げようとしたら、無理やり捕まえてこい〟

南雲にそう指示されているから、大人しくしていて――と。

私は盛大な溜息を吐き出し、諦めて青年についていくことにした。

彼は悪くない。悪いのは、あの男だ。こうなったら直接文句を言ってやらないと気が済まないわ。


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