熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
悔しさに歯噛みしたいのを堪え、俺は必死に頼み込んだ。
「……教えてくれ。どこだ?」
『たぶん、姉夫婦のところだろう。住所も知ってるから教えるけど、その前にこれだけ確認させて』
突然真剣味を帯びた声で、兄が俺に問う。
『この先、なにがあっても詩織を幸せにすると誓えるか?』
そんなこと、当たり前だ。しかし、それをどうして兄に誓わねばならないのだろう。
腑に落ちないものを感じつつも、俺は自分の中にある覚悟をしっかりと伝える。
「ああ。誓うよ。俺はこの手で詩織を幸せにする。」
『……よし。じゃあ今から言う住所に向かえ』
兄に教えられたのは、詩織の姉夫婦の家。幸い住所は都内で、すぐに向かえる距離だった。
今度こそ逃げないでくれよ、詩織――。
行き先がわかっても安心などできず、俺は落ち着かない気持ちのまま空港を出ると再びタクシーに乗り込んだ。