熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「もしもきみが俺を拒絶したとしても、この気持ちは変わらない。そのときは、詩織を想いながら、ひとりで生きていくまでだ。でも……できることなら、きみと二人で生きていきたい。それは、過ぎた願いか……?」
言葉尻は切なげに掠れ、梗一の一途な想いが痛いほど伝わってくる。
……過ぎた願いなんかじゃない。私だって、あなたとともに生きたい。
でも、もう〝二人〟だけの問題ではない。梗一はそれでも、私を選んでくれる……?
完全に不安が拭えたわけではないけれど、彼の誠実な言葉に、私もようやく真実を話す決心がつく。
両手で涙を拭って立ち上がると、ドアに手をかけてほんの少しの隙間を開けた。
「詩織……?」
「梗、一……」
そこから覗いた彼の瞳は最初こそ戸惑いに揺れていたものの、私の姿を確認すると愛しげに細められた。
そして彼はドアを勢いよく開け部屋になだれ込んできたかと思うと、私を逞しい腕の中に閉じ込めた。
「やっと捕まえた……どれだけ会いたかったか……」
感極まったような掠れ声と懐かしいムスクの香りに包まれて、胸がぎゅっと締め付けられる。
私の目には拭ったはずの涙がまたあふれて、口からは嗚咽が漏れた。
「ごめんな、さい……っ。私……」
このことを聞いたら、梗一は、どう思う? 彼の反応が、怖い。
でも、もう逃げている自分も嫌なの――。
私はかすかに顔を上げ、意を決して口を開いた。