熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~

「私ね……妊娠、しているの……」

震える涙声で、告白する。梗一の目が見開かれ、私をまっすぐに見つめ返した。

とてつもない緊張で、全身が心臓になったようにどくどくと脈打つ。

ねえ梗一。今、なにを思っている? そんなはずじゃなかったと、後悔してる?

もしもあなたに拒絶されたら、私、どうやって生きていけばいいのか……。

最悪の展開ばかりが頭をよぎって、不安に負けそうになる。

それでもじっと彼の反応を待っていたら、梗一はしばらく沈黙したのち、まじめな顔で尋ねてきた。

「俺と詩織の子……ってことだよな?」

「……そうよ」

私が頷いて肯定すると、彼はしみじみと目元を緩めて、幸福そうに息をついた。

「驚いたが……うれしいよ。詩織と愛し合うことを、神が認めてくれたみたいだ」

大袈裟なセリフで喜びを表現する彼の様子に、私の胸にもようやく安堵が広がった。

そうよ……梗一は、そういう人だったじゃない。

自分の子を身籠った私を突き放すなんて、するはずがない。

彼は、いつも一途に愛を注いでくれる、私の王子様なんだから――。

安心して気が緩み、思わず滲んだうれし涙で目尻を濡らしていると、今度は梗一の方が心配そうな顔をして言う。

「今、子どもはどれくらいなんだ? 体調は? 飛行機なんか乗って平気だったのか?」

矢継ぎ早に質問してくる彼がなんだか可愛らしくて、私は泣き笑いを浮かべる。


< 118 / 181 >

この作品をシェア

pagetop