熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「先生……!」
「兄さん……なんで」
呆然とする私たちににっこり微笑みかけた彼は、私たちを階下のリビングに来るようにうながした。
私と梗一は顔を見合わせ、とりあえず言われるがまま部屋を出た。
*
甥のおもちゃで少々散らかったリビングに来ると、姉と姉の夫、二歳の甥、そして梗一と私、桔平さんという妙な顔触れがそろった。
甥の大地がテレビアニメに夢中になっている隙に、円になるように座った大人たちが話し始める。
「さて、この中にひとりだけ仲間はずれがいます。それは誰でしょう」
開口一番、そんな問題を投げかけたのは先生だ。姉夫婦は答えを知っているようで意味深に微笑み合っていたけれど、私には見当もつかない。
すると、隣に座る梗一がつまらなそうに言った。
「そんなの、兄さんに決まっているだろう。この中でひとり浮いた存在だ」
「お前……ホント可愛くない弟だな。しかも不正解」
「あ、そ。どうでもいいから早く正解を言ってくれ」
どうやらこの兄弟は本当に仲が悪いらしい。険悪なムードに若干ハラハラしていると、先生がひとりの人物に向けてびしっと指を突き付けた。
それは姉の夫、雅春(まさはる)さんで。