熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「……まさか、〝恋愛しない方がいい〟という助言も、妹可愛さに出た発言だったのか?」
梗一が先生を追及すると、先生はあっさり認めた。
「そう。ついでに、お前の秘書を味方につけて日本に呼び戻したりしたのも、弟とはいえお前がちゃんと詩織に相応しい相手かどうかを見極めるためだ。まさかあの短い間で子どもができちゃうとは予想外だったけど」
悪びれもせずそんなことを語る先生に、梗一は頭を抱えて疲れたように言う。
「……ちょっと妹と弟の扱いに差がありすぎないか?」
「そりゃ、どっちが可愛いかと言われたら妹だもん。だからお前が帰国した後、詩織の様子が心配でわざわざ見に行ったんじゃないか」
はぁ……と盛大な溜息をつく梗一に、クスクス笑ってしまう。きっとこの先も私たち、勝手気ままなこの兄には敵わない。
だいたいの話が済んだところで、テレビアニメを見終わった大地が大人たちの輪に入ってきて、姉の膝の上にぴょんと乗った。
そして眠たそうにあくびをする可愛い姿を見て、梗一が私のお腹にそっと手のひらを当て、穏やかな声色で言った。
「楽しみだな……この子に会うのが」
「うん。そうね」
姉の家庭の温かさに触れ、突然兄だと判明した先生の一風変わった愛情にも触れ。
なにより、愛する人と再会し、互いの気持ちを確かめ合うことのできたこの夜。
私はようやく、お腹の子どもの母になる勇気と覚悟が心に生まれたのだった。