熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
夕食の後お風呂に入って部屋に戻ってくると、梗一から電話がかかってきた。
メッセージのやり取りは毎日しているけれど、彼は忙しい人なので電話は週に一度くらいしかできない。
なので、貴重なそのタイミングを逃してなるものかと、スマホを置いてあるベッドに早足で近づき、腰かけながら電話に出た。
「お疲れ様、梗一」
『よかった、起きていたんだな。今日も一日何事もなかったか?』
梗一の優しげな声に、胸がとくんと優しく音を立てる。そしてしみじみと〝彼が好きだなぁ〟と感じる。
島で出会った頃は、恋愛のプロセスなんて全く無視して激しくお互いを求め合うことしかしてこなかったから、今こうして穏やかに愛を育めることが、とても幸せだ。
「ええ、平和よ。困ってることといえば、私の料理の腕がなかなか上達しないってことくらい」
『練習してるのか、料理』
「姉に教わりながらね。でも、一朝一夕には上達しなくて……」
しょげた声でそう告げると、耳元のスマホから梗一がふっと笑いをこぼすのが聞こえた。