熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「だと思ったからこうしたまでだ。一緒に食事をしよう。テラス席を予約してある」
「ちょっと、まだ言いたいことは山ほど!」
声を荒げる私を無視するように、なぜか道路の方へ向かっていく南雲。
彼はそこで、私をここまで連れてきた青年とツクツクの運転手にチップを渡していた。
相変わらず憎たらしい男。お金で何でも自分の思い通りになると思っているんだわ。
青年たちの乗ったツクツクは走り去り、やがてこちらに戻ってきた南雲は、仏頂面のまま立ち尽くす私にふっと甘い笑みをこぼした。
「本当に可愛いな、きみは」
そう呟くと、許可なく私の腰に手を添えた。
密着した彼の体温とふわりと鼻先をかすめたムスクの香りに、不本意にも頬が熱くなる。
「ちょ、ちょっと。なによこの手」
「紳士的な態度を取れと言ったのはきみだろ。女性をレストランまでエスコートするのは、男として当然の嗜みだ」