熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
『……詩織がキッチンで試行錯誤している姿を想像すると可愛いな。そういえば、アトリエで俺にコーヒーを振舞おうとした時も、お湯を沸かすのすら慣れていない動作で可愛いと思っていたんだ』
……そういえば、そんなこともあったかしら。でも確か、梗一が邪魔してきたせいで、結局コーヒーを淹れることは叶わなかった。
その代わり、寝室に連行されて彼に甘く溶かされてしまって……。
黙ったまま当時の記憶を反芻していたら、梗一が突然ささやくような吐息交じりの声になって言う。
『今、俺たちが初めて抱き合った時のこと、思い出してる?』
完全に図星だったので動揺してしまい、心臓が一度大きく脈打った。
「お、思い出してないわよ」
素直に認めるのは恥ずかしすぎるので、ドキドキしながら否定する。でも、梗一はなにもかもお見通しだといわんばかりにくすくす笑った。
『まあ認めたくないならいいけど……俺は思い出してたよ。詩織を初めて抱いた時のこと。詩織の綺麗な体、色っぽい声、触れた感触のすべてが、鮮明に焼き付いてる』
……そんなの、私だって同じだ。
梗一の逞しい体躯も、ささやかれる甘い言葉も、肌をなぞる指の動きも、彼を受け入れた時の甘い痛みも……どんなに忘れようとしたって、心と体が覚えているから。