熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
せっかく久々に梗一と話せたというのに、なんだか気分が沈む……。
今後のことについて、彼は明るく励ましてくれたけれど、本当のところはどうなのか私には全く予想もつかない。
優良さんは美しいモデルであるうえ、家柄のいいお嬢様でもある。南雲グループという大企業を背負って立つ梗一に相応しい相手は、私でなく彼女だと、百人中百人が思うであろう。
ただ、愛されているのは私だという自信はきちんとある。梗一が自分の意思で優良さんと結婚するというのは、あり得ないことだとも思う。
しかし、梗一のような立場のある人が、自分の意思だけで物事を決めていいのだろうか。
彼の結婚相手が、家事もろくにできないこんな絵描きのはしくれで……しかも、結婚前に身籠ってしまうような思慮の足りない女で、大丈夫なのだろうか。
考えていくうちに不安が膨らみ、泣くつもりなんてないのに瞳が潤んだ。
……きっと、妊娠のせいで情緒不安定になっているんだ。
この心細さは、ホルモンのせい。大丈夫、大丈夫――。
私は自分を騙すように何度も胸の内で言い聞かせ、それから思考を遮断するように布団をかぶって寝てしまうことにした。