熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
憂鬱な気持ちがなかなか振り払えず、私はトイレから出たあとも、借りている部屋のベッドに横になってぼんやりする。
絵の具はハンカチで鼻を押さえながらなんとか部屋の奥にしまい込んだため、吐き気はとりあえず落ち着いていた。
しかし昼になってもなにも食べる気力がなく、不毛な時間だけが過ぎていく。
そして、外の日が少し傾き始めた頃。不意に、家のインターホンが鳴るのが聞こえた。
私は基本的に、姉の家への来客の対応はしなくていいと言われているけれど、一度目を無視したらまた二度三度と鳴らされ、なんだか気になってしまう。
ハンカチで鼻と口元を押さえつつ階下に降りて、ダイニングの壁にあるモニターを覗いた。
そこに映っている意外な来訪者の姿に、私は一瞬息が止まりそうになった。
「優良、さん……?」
小さなモニター越しからでも、彼女の存在感や、輝くような美しさがよくわかる。
でもどうしてここに? 今日は、先生が彼女と会うって梗一に聞いていたけれど……。
私は戸惑いながらも、玄関へ向かった。