熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「こんにちは。突然押しかけてごめんなさいね、詩織さん」
玄関のドアを開けて対峙した優良さんは、モニター越しよりもさらに美しく、華やかなオーラを纏っていた。
背が高く、上品に緩く巻かれたロングヘアは毛先まで艶やか。元の顔立ちが整っているからか、シンプルなメイクなのに垢抜けて見える。
それに比べて、靴箱の戸に取り付けられた鏡に映る自分は、少しやつれて顔色も悪く、髪も少しパサついている。優良さんに敗北感を覚えるなという方が無理だった。
私は鏡からも優良さんからも目をそらし、床を見ながら言う。
「いえ……。あの、中へどうぞ」
「ありがとう。お邪魔するわ」
彼女がここへ来た経緯はともかく、理由ならばだいたい察しがつく。
きっと、梗一のことで私になにか話があるのだろう。その内容が、いいものであるか悪いものであるかは……あまり考えたくないけれど。
私は優良さんをリビングに通してソファをすすめ、キッチンで紅茶を淹れると、優良さんの前のテーブルに置いた。
そして、彼女と向かい合うように、一人掛けソファに腰かける。
優良さんは、紅茶にお礼を言うことも口をつけることもなく、美しい微笑で私を見つめながら口を開いた。