熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「費用はここから出して? たぶん余ると思うけど、梗一があなたにかけた迷惑料とでも考えて受け取って?」
費用って……中絶の? それに迷惑料って……?
恐る恐る手を伸ばして封筒の中身を確認すると、見たことないほどの札束が入っていた。
私はすぐさま封筒を優良さんに突き返す。
「こ、こんなもの、受け取れません!」
「いいのよ遠慮しなくて。それくらい端金だもの」
あっさりそんなことを言い切る彼女に、唖然としてしまう。
は、端金って……。百万円くらいは入っているのに。
でも、お金のことはともかくとして、私、優良さんにどうしても伝えたいことが……。
「あの……私、中絶するなんて、考えてません! この子を産んで、梗一と一緒に育てたいって、そう思ってるんです!」
私は勇気を出して、優良さんに訴えかけた。
妊娠が発覚したときも、空港から逃げ出したときも、不安で仕方がなかったけれど、中絶の文字が頭に浮かんだことは一度もない。
一度お腹に宿って、今も私の中で着実に育っている命をなかったことにするなんて……私にはできない。