熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「そう、彼女、いなくなったの……。ようやく立場をわきまえたみたいね」
副社長室に通された彼女は、サングラスを外して勝ち誇ったように微笑み、応接用のソファに腰を沈めた。その言動から、詩織を傷つけたのは彼女であると俺は確信した。
しかし、詩織が姿を消した日に優良と会っていた兄からは、『詩織が妊娠していると知って優良ちゃんも観念したみたい』と聞いていたのだが……。
「兄さんの前では猫をかぶっていたのか?」
俺はデスクに腰かけたまま、鋭い視線を優良に向ける。
「ええ。あなたがバカンスを楽しんでいる間……桔平さんが〝偽の結婚話で梗一を試したい〟と持ち掛けてきた時からね。桔平さんの前ではいい子ぶったけれど、私はその結婚話を真実にしてしまうつもりで、色々と計画を練っていたの。理由は前に聞かせたわよね? モデルとしての賞味期限を迎える前に、次の道を用意しておきたいのよ」
優良は罪悪感などまるで感じていない様子で淡々と語る。新聞に俺たちの記事が載ったのも、彼女の計画の一部だったのだろう。そして、今回のことも……。