熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~

「詩織になにを言った」

「……さぁ。ただ、助言してあげただけよ。どうかみんなの幸せを考えてね、って」

「嘘をつくな! それだけで彼女がいなくなるはずがない!」

俺は思わず感情が高ぶり、拳でデスクを叩いてしまう。その大きな音にビクッと肩を震わせた優良は「驚かせないで」と冷めた声で言って、薄笑いを浮かべ本当のことを話し出す。

「彼女が、子どもを堕ろすつもりはないと言うから……梗一と結婚するのは間違いなく私で、あなたが子どもを産んでも妾の子になるだけよ、と教えてあげたの」

そう言って緩く巻かれた髪をうっとうしげにかき上げる優良に、愕然とする。

詩織は元々、俺との間にある身分差のようなものを気にしていた。だから、例の新聞記事を見た時にも深く傷つき、俺と関わらない方がいいのだと、身を引いたのだ。

そんな彼女が、この華々しい外見とスペックを持つ優良に、わが子を〝妾の子だなんて言われたら……。

詩織はどれほど傷ついただろう。どれほど打ちのめされただろう。

他の誰でもないこの俺が、守ってやるべきだったのに……。



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