熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「……もういい、わかった。二度と顔を見たくないから出ていけ」
「なにを言ってるの? 私たち、近いうちに婚約の記者会見をするのよ? 今日来たのも、その打ち合わせのため――」
悪びれもせず会話を続けようとする優良を遮り、俺は怒りに震える声で告げる。
「聞こえなかったのか? 俺の前から失せろ。会見するなら俺だけでいい。〝天海優良とは破局した〟――そう言うだけだからな」
俺のあまりの迫力に優良は少したじろいだが、最後の手段とばかりにこう言った。
「正気? そんなことしたらパパが怒って、南雲グループとの契約を一切打ち切るわよ?」
「……パパ、ね。俺は残念だよ。昔のお前はそうやって、父親の権威を盾にするようなヤツじゃなかったのに」
そう言ってまっすぐに彼女の瞳を見つめると、優良は気まずそうにプイと顔をそらす。
「そんなの、私の勝手でしょ……っ」
「そうだな。お前の勝手……ただのワガママだ。そして天海社長はお前のそんなワガママに付き合うような人じゃない。いい加減目を覚ませよ、優良」
昔は気の合う友人だった。当時の優良は外見だけでなく内面までも輝いていたし、尊敬もしていた。
それが今ではどうだ。キラキラ輝く容姿の裏で、どんどん自分を醜く貶めている。
友人として、そんなことはもうやめてほしいんだよ――。