熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
きっと、強がっているのだろう。しかし、優良ならばこの先本当に強くたくましく、もっと魅力的な女性になれるはずだ。そして自分自身の力で、仕事を成功させてほしい。
「別にあなたたちの味方になったわけじゃないから、勘違いしないでよね。私と結婚しなかったこと、いつか後悔させてやるわ」
「……ああ。後悔するほど、優良が活躍するのを見せてくれ。俺はずっと、応援している」
憎まれ口を叩いたのに、背中を押すようなことを言われた優良は、完全に俺から顔を背けると、うつむいて小刻みに肩を震わせた。そして――。
「ごめん、なさい……」
聞き逃してしまいそうなほどの微かな声でそう言い残し、優良は副社長室を後にした。
パタンと扉が閉まると、俺は思わずため息をこぼし、ソファに背中を預けて天井を仰いだ。
そして無意識に思い浮かべるのは、愛しい人の顔。
詩織……きみは今、どこにいるんだろう。捕まえても捕まえても、この腕をすり抜けてしまう。
優良と俺との結婚話がなくなったとメディアが報じれば、姿を現してくれるだろうか。
……いや。意志の強い彼女のことだ。おそらく、一度決めたことは曲げない。
やはり、俺が自分で捜さなければダメなんだ……。