熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~

・新作の絵


俺はその日から血眼になって詩織を捜した。しかし、なかなか思うような収穫にはつながらない。

詩織の実家だった場所や通っていた学校のある場所で聞き込みをしたり、彼女の絵を扱ったことのあるギャラリーの関係者に話を聞いたりもしたが、手掛かりはゼロ……。

その間に、優良が南雲グループ次期社長と破局したことは大きなニュースになったが、予想していた通り詩織が自分から姿を現すことはなかった。

そしてなんの手掛かりもつかめないまま季節は巡り、いつしか半年もの月日が過ぎていた。

俺はかなり疲弊し、しかし眠れば詩織のことばかり夢に見てしまい、一日中淡々と仕事をこなすだけのロボットへと成り下がっていた。

そして、二月のある日。夜もほとんど休息をとらなかったのが仇となり、俺はとうとう過労で倒れ、職場から救急車で病院へ運ばれた。

母と兄が見舞いに来て、「働きすぎだ」と釘を刺されるのとともに、入院中は大人しく休むようにと口酸っぱく言われた。

その後、母が担当医に呼ばれて席を外した際、タイミングを見計らったかのように、兄が口を開く。

「タイのアトリエにも、いなかったよ。先月行ってみたんだけど」

「……捜しに行ってくれたのか」

「まぁね。こう見えて責任感じてるんだ。可愛い妹をお前に託す前に、ちょっとした恋の試練を与えたつもりだったが……そのせいで優良ちゃんを変な風に焚きつけてしまったし、詩織につらい思いをさせた」



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