熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「未練……」
詩織……じゃあ、きみはまだ俺を……?
これは間違いなく、俺に宛てられたメッセージだ。彼女は未練を抱き……そしてこの背景……詩織はまだ、東京に?
確かめるように再度視線を上げ、注意深く目を細めて絵を観察していたその時だった。
「やっぱり。あなたなら、見つけてくれると思ってた……」
背後で響いた女性の声に、俺は息が止まりそうになった。
まさか……この声は……。
信じられない思いでゆっくりと振り返ると、何度も夢に見た愛しい相手が、そこに立っていた。
「詩織……」
そう呟いたきり、あまりの驚きで、駆け寄って抱きしめることも忘れてしみじみとその姿を眺める。
艶めいたストレートのロングヘア、長い睫毛に縁どられた意志の強い瞳、口紅を塗らずとも鮮やかなピンク色をした唇……。その美しさは以前と全く変わらない。
変わったのは、そう……すこしふっくらとした顔の輪郭と、優しい丸みを帯びたお腹だ。
よかった……。二人とも、無事でいてくれたんだな……。詩織はたったひとりで、俺たちの大切な子をを守ってくれていたんだ……。