熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「ええ、ご家族の話は私もその時に聞いた。彼がいろいろな仕事をしていたのは家族を養うため……。でも、本当にやりたいことは、立派な画家になって家族の助けになることなんですって。でも、あの島にいたら絵が売れても大したお金にはならないし、後ろ盾になってくれるような人もいない。それで思い悩んでいた時、あなたと出会った」
「……俺に?」
不思議そうに自分を指さす梗一にクスッと笑い、私はサムットの言っていたことを代弁した。
「島一番のホテルの、しかも一棟しかないヴィラに泊まり、そこに女性を呼びつけてイイコトしてるなんて、南雲梗一という男はきっと日本の王様か何かに違いない。彼がもし自分の絵に価値を見出してくれたら、画家として生きる道も開けるんじゃないか。そう思って一念発起し、日本に来たそうよ」
あの島で生まれ育った彼らしい、素朴で純粋な考えを聞き、梗一は気まずそうに口元に手を当てながら苦笑した。
「王様って……そんなふうに思われていたのか、俺は」