熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「あの傍若無人な振る舞いじゃ、そう思われても仕方ないわよ。それでね、彼、あなたが帰国した後にあのホテルに行って、梗一の個人情報を聞き出そうとしたらしいの」
「……追い返されただろう」
「ええ、かなりしつこく食い下がったらしいけど。……でもね、その時、彼のあまりの熱意に負けて、ホテルの従業員が〝その人の忘れ物ならある〟と、これを渡してくれたんだそうよ」
私は説明しながら、傍らに置いたバッグを漁る。そして取り出したのは、一冊のスケッチブックだ。
「これ、あなたのでしょう?」
そう言って梗一に差し出すと、彼は驚いて目を見張った。それから覚悟を決めるようにふうっと息をつき、私に尋ねる。
「……完全に忘れていたよ。詩織も中を見たのか?」
「ええ、もちろん。これを見たから、沖縄行きを取りやめてもう一度あなたに向き合おうって決めたんだから」
私は手の中にあるスケッチブックをパラパラとめくって、あるページを開いた。
そこには、鉛筆の優しいタッチで描かれている、私の寝姿があって。