熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
だから、色っぽいことはなにもないのよ。そう説明するつもりでサムットの頑張りを話してみたけれど、梗一の機嫌は直らず。
「……詩織は今日からここに住む。荷物を取りに戻る時は、俺も同伴する。サムットには格安で新し部屋を用意し、絵の指導は兄さんに代わりを頼む。それでいいな?」
有無を言わさぬ迫力で返事を求められ、私はわざとらしく肩をすくめてこう言った。
「はい。わかりました、王様」
茶化すようなそのセリフに、梗一がガクッと脱力する。
「……すごく馬鹿にされているような気分なんだが」
「とんでもございません。……私は、あなたを愛しています」
私は冗談の流れに乗って、本心をサラッと告げた。そして意表を突かれたような顔をする梗一に、少し顔を上げてチュッとキスをした。
数秒後、ゆっくり唇を離すと急に恥ずかしくなって、頬が熱くなるのを感じながら上目遣いで彼の表情を窺う。
すると、梗一は今にも襲い掛かってきそうな獣のごとく目を細め、なにかを我慢しているかのようなかすれ声で言う。
「俺も、愛しているよ。……正直、抱きたくてどうにかなりそうだ。でも、今は我慢しないとな……」