熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
広い寝室には、今までに私の描いた絵が驚くほどたくさん飾られていた。
大きさも、色も形も違うさまざまな蝶たちが、ふたりの再会を祝福して一斉に舞っているようにも見える。……なんて、少し都合のよすぎる考えかな。
でも、それほど今が幸せだ。
梗一が私を見つめて愛しそうに目を細めることも、しっかりと指を絡ませて手を握り合えることも。
お腹に宿る命を気遣って、ゆっくり穏やかに私の中に彼の熱が広がることも――ぜんぶぜんぶ、涙が出そうなほど、幸せだ。
*
たくさんのキスをしながら、ゆるやかに体を重ねてお互いが満たされた後も、私たちはなんとなく離れがたくて、ベッドの中でずっと寄り添っていた。
そんな時、梗一が私のふくらんだお腹にそっと触れながら言った。
「詩織、結婚しよう、すぐにだ。もう、二度と俺から離れられないように」
その時脳裏に蘇ったのは、一度は断ってしまい、人知れず涙を流した過去のプロポーズの記憶。
あの時は勝手なことをしてしまったのに、こんな私にもう一度結婚を申し込んでくれる彼の一途な想いがうれしくて、思わず瞳が潤む。