熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
・愛しい家族
それから間もなく私と梗一は籍を入れ、私は南雲詩織になった。
結婚式は、子どもが生まれて落ち着いてからという話でまとまり、出産まではとても平和な日々が過ぎていった。
そして五月九日の夜。
妊娠四十週と二日で、とうとうその時は訪れた。
眠りに就こうとした頃に陣痛がやってきて、すでに帰宅していた梗一と一緒に時計を見ながら間隔をはかり、十分間隔になったところでかかりつけの産院へ。
まず陣痛室に梗一と二人で入り、私は額に脂汗をにじませて、波のようにやってきては引いていく痛みをこらえた。
梗一は、本やネットで予習済みだった、痛みを逃す呼吸法をそばで一緒にやってくれたり、腰をさすってくれたり、飲み物を飲ませてくれたり……とにかくやれることはすべてやってくれた。
そしてとうとう、痛みの間隔もその強さも、今までとは違う本格的なものになり。
「ああ……もう、出てきそう。お願い、助産師さんを……」
「わかった。頑張れ、詩織」
出産が平日の昼間なら梗一の立ち合いは無理だと思っていたけれど、幸い今は深夜。
分娩室まで夫が付き添ってくれることを頼もしく思いながら、私は人生で初めての出産に臨んだ。