熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「はいっ、今よ! 南雲さん!」
「んんん~!……はぁ、はぁ。ダメ……もう、力が……」
分娩室に移動してからは、助産師さんに声を掛けられるタイミングでいきむのだけれど、いきんでもいきんでも赤ちゃんは出てこなかった。
出産ってこんなに苦しいものなの?
もっとスルッて産まれてくるのかと思っていたのに……。
私は苦しみながら、時折遠のく意識の中で全世界の母親に敬意を表したくなったり、かと思えば今すぐ分娩台から下ろして!と叫びたくなったり。
とにかく色んなことを考えパニックになりながらも、必死で力を入れた。
それから、永遠にも感じられる数時間が過ぎ――。
「頭が見えてきましたよ! もうひと息!」
赤ちゃんが、見えた――!?
その事実を告げられると、ぐったりしていたはずの体に不思議と力がみなぎった。
早く、あなたに会いたい。可愛い顔を見せて。
ほんの少しでいい。ママに、力をちょうだい……!
そうして今一度力強くいきんだ瞬間。ずっとずっと重たかった下半身が、嘘のようにふっと解放された。