熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
走り出した車の中で助手席から後ろを振り返ると、創也は後部座席のチャイルドシートから窓の景色を真剣な瞳でジッと見つめている。
そのあどけなさと真剣さのギャップが、なんともいえず可愛い。
「なにを思っているのかしら」
「詩織の血を引いているからな。案外、芸術的なことかもしれない」
得意げにそんなことを言う梗一に、私は呆れてしまう。
「親ばかね。三カ月の子になにを言ってるのよ」
「わからないぞ。子どもの可能性は無限大だ」
創也は、次期社長である梗一の長男。今までの通例ならば梗一の次に跡継ぎになるのだけれど、梗一は常々、一族で経営を独占する体制を廃止したいと考えている。
だから創也の将来は、自分自身で決めてほしいのだそう。私もその考えには賛成だ。
「……そうね。ホント、これからが楽しみ」
そんな話をしていると、ちょうど赤信号で車が止まる。後ろの創也を確認すると、いつの間にかスヤスヤと眠っていた。
その安らかな寝顔を確認してふっと微笑んでから前に向き直ると、いきなり梗一の顔が目の前にあって、不意打ちのキスをされた。