熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
・恋に落ちる前触れ
彼の予約したレストランのテラスは、日本よりずっと多くの星が輝く夜空が頭上に輝き、穏やかなさざ波の音が聞こえる、心地いい席だった。
そして彼の言った通り、料理の味も格別。
新鮮な野菜の生春巻。スパイシーな魚介のスープ。ハーブの香りが爽やかな肉料理。スイートチリソースのかかった、大きなエビのフリット。
それらの料理に、彼が持ち込んだのだというワインはよく合い、普段お酒を飲まない私も気分がよくなり饒舌になった。
「ねえ、あなたの歳は?」
「きみの五つ上。三十一だ」
少し意外だった。副社長という肩書きや、常に醸し出される大人の色気から、もう少し年上なのかと勝手に想像していたから。
「ふうん。家族は?」
「両親と、四つ上の兄がいる」
「お兄さんは、南雲グループとは関係ないの?」
素朴な疑問をぶつけると、形のいい南雲の眉がぴくりと反応した。それから、グラスに残っていたワインを煽るように飲んで言う。