熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
けれど、こんなに簡単に流されてしまっていいのか。
彼に興味があるのは事実だけれど……正直言って、不安や恐怖もある。
なにせ、私はまだ男の人というものをちゃんと知らないのだ。そしてこの先も永遠に、知らずに生きていくものだとばかり思っていたのに……。
「詩織」
なかなか決断できない私を見て、南雲がそっと声をかけてきた。
「時間がないから順序を無視するとは言ったが、嫌がるきみを無理やり犯そうなんて物騒なことは考えていない。だから、怖がらずに来てくれないか?」
穏やかな声色に気持ちは少し傾くけれど、完全には信用しきれない。
私はじろりと彼を睨んで言った。
「……キスは、無理やりだったような気がするけど」
「それはきみが〝嫌がっていなかったから〟な。……ああ、あの時の蕩けそうな詩織の顔を思い出したらまた口づけたくなってきたよ。こんな邪魔なテーブルがなければ、すぐにでも唇を奪うのに」
悩まし気な視線で見つめられ、心臓がはち切れんばかりに大きく脈打った。
そ、そんな危ない発言されたら、余計に部屋になんか行けないじゃない……。